診療案内

涙道疾患(涙の下水の病気)について


涙道を扱っている施設でも対象外となるような小児の涙道疾患,涙道手術後に再閉塞した例および極めて難治な涙小管水平部閉塞も治療しています.涙目を専門とする病院は,まだ国内でも少ないのですが,涙の下水が詰まってお困りの方は遠慮なく当院にどうぞ.当外来には涙道手術に必要な器具と精通したスタッフが揃っています.

涙道手術は2023年で129側(関連病院で執刀したものも含む)行い,初回涙嚢鼻腔吻合術の成功率は約95%でした.

なぜ涙目になる?


涙目はどのような原因で生ずるのでしょうか.大きく分けて涙の下水の調子が悪いことで涙の排出が悪くなりあふれる場合と,花粉症などで涙が沢山出過ぎる場合があります.

涙の下水の調子が悪くなるのは中年以降の女性に多く,涙の下水が狭いか詰まることで涙目になります.では涙の下水について以下に述べます.

涙はどこから生まれてどこへ行く?

涙は涙腺より出て,目をうるおしたり,角膜(くろめ)に酸素を供給したり,目の表面の汚れを洗い流します.ではその後の涙はどうなるのでしょうか.一部は目の表面より蒸発しますが,多くは目頭の所にある涙点(鏡でよくみるとわかります)より涙の下水道(専門用語で涙道といいます)を経て鼻腔に排出されます.目薬をさした後にしばらくしてから苦い感じがすることがあるのは目薬がこのように鼻に抜けるためです.涙の上水道の病気には,涙の産生量が低下して,目が乾くドライアイという病気があります.次の項目で述べる涙の下水道の病気には,鼻涙管閉塞,涙小管閉塞, 先天鼻涙管閉塞などがあります

涙道(涙の下水道)の病気


1. 成人の鼻涙管閉塞

涙の下水道は普通のパイプのような均一な太さの管でなく,下図1のように涙点,涙小管,涙嚢および鼻涙管より構成されています.なかでも鼻涙管が何らかの原因で詰まることがあります.その状態を鼻涙管閉塞(下図2)といいます.多くの場合詰まる原因は不明ですが,中年以降の女性に多い病気です.症状は目やにと涙のあふれです.

 

治療法は詰まった所を解放して,再度詰まらないようにシリコーン樹脂などのチューブを置く方法と,詰まった所にバイパスを作る方法があります.チューブを置く方法は40分程度で終了しますが,病気が古い方には成功率が悪いのが欠点です.手術時間はどちらも約40〜60分で,日帰りです.

 

術後の通院は4〜6回です.遠方のかたは術後お近くの眼科で診てもらうなどご相談に応じます.


2. 涙小管閉塞


涙小管が何らかの原因で詰まるために起こります. 症状は涙目です.治療法は涙道内視鏡画像を見ながら詰まったところを広げて,再度詰まらないようにシリコ-ン樹脂のチューブを置く方法があり,比較的良く治ります(成功率約90%).

3. 先天鼻涙管閉塞


涙は目から鼻に抜けるトンネル(涙の下水:専門的には涙道と言います,上図1)を通って鼻に排出されます.涙道は胎児の時に作られますが,トンネルが鼻に開く出口に薄い膜が残って生まれてくることがあります.それを先天鼻涙管閉塞といいます.

 

症状は片目だけ泣いていない時でも涙が多く,朝起きたときに目が開かないくらい目やにが付いていることです.生まれた直後は約5-20%の子がなっているとの報告があります.多くの子は生後1歳頃までに自然に治ります.治療は経過の観察と針金で閉塞を開放する方法です.生後6カ月までは自然に治ることが期待できますので経過を見るだけです.自然に治らない場合,先端を丸くした針金で膜を破り治療します.ほとんどの例は針金で膜を破るだけで治癒します.

“針金で膜を破るのは”

膜を破るのは生後7か月を過ぎた場合に行います.所要時間は数分です.顔に傷も残りません.1回目の成功率は1歳児で95% 位です.2歳で80%位です.再閉鎖した場合再度行います.